フロストシーディングとは
フロストシーディングとは、土壌が凍結する冬前に牧草のタネを播き、種子をそのまま地下で越冬させ、翌春に発芽させること。発芽に必要な温度条件に適さない時期に播かれたタネたちは、早春に芽吹く。
メリットはいろいろあるのだが、
- 早い時期(4月下旬〜5月)から牧草が発芽する。
- 春播きと比べ、土壌水分が十分あり、干ばつの影響による発芽不良を招くことがない。
- 忙しくない時期に落ち着いて種まきできる。
- 雑草が生えない時期に牧草が生え始めるので、雑草が少ない草地になる。
などといった点が挙げられる。
ここに来た最初の年、まだ雑草の芽も出ない4月早々に種苗屋さんに駆け込んで、店員さんの怪訝な顔を尻目に牧草のタネをを注文しまくった。ゴールデンウィーク前に焦って種まきしたものの、一向に芽が出ない。6月に入り、『もうタネは死んだ。』と諦めた頃、か弱いひげのような牧草たちが生え始めた。でも、馬たちはひ弱な牧草には目もくれず、乾草ばかり食べている。ちょっと怒りをおぼえたものだ。そんな牧草たちも、風化した馬糞に育てられ少しずつ大きくなり、今はもう、簡単には絶えない大株になっている。「牧草って育つのにこんなに時間がかかるんだ。」「気温が上がらなければ、芽は出ない。つまりかなり夏が近くならないと、緑の放牧地にはならない。」最初の学びはそこだった。
当時不思議でならなかったのは、通勤路の草地は雪解けの下で既に芽吹いていること。白かった景色が、茶色を経ずに緑色になる。あれこれ調べているうちに出会ったのが「フロストシーディング」という言葉だった。本州育ちの自分には、何やら新鮮な響きである。どうやら、晩秋と冬の境目くらいの時期に種まきすれば、あの緑の草地を手に入れられるらしい。Frost=霜 + Seeding=種蒔き、つまり霜が降りる初冬にタネをまくということ。タネは発芽のスイッチが入らないまま冬を越し、「温度・(雪解け)水・酸素」という発芽の3要素がそろう春、いっせいに芽吹き始める。
以来毎年、冬が始まる直前に牧草のタネを蒔くことにしている。種まきの時期は、意外とピンポイントだ。「日平均気温が 5 ℃を下回る時期~根雪始まで」、「平年の日平均気温が 6 ℃以下になる時期以降で、なおかつ、日平均気温 7 ℃以上の日が 3 日以上続くことがなくなる時期~根雪始まで」と表現され、例年の気温から逆算すると、うちのあたりは10月最終週から11月上旬が最も適している。・・・つまり今週末だ。
播種に適する草種と種まき時の注意点
イネ科牧草の単播が基本。イネ科の中ではチモシーのタネが小さく、比重が比較的重いため、土壌に密着しやすく定着率が良い。オーチャードグラスはタネが大きく、比重が軽いため、凍った土の上で風に飛ばされるリスクがある。マメ科牧草は、発芽温度が低く、適切な時期に種まきしてもタネが吸水し枯死してしまうためフロストシーディングには不向き。
播種量は通常の2割増し。鎮圧することが推奨されるが、うちは機会がないので播きっぱなし。肥料はタネが発芽する前に雪解けや雨で流れてしまうため、基本的に発芽してから播く。雪解け等で土壌が流出するため、本来傾斜地ではできるだけ避けるべきだが、うちはほとんど傾斜地なので・・・しかし、去年までの経験では、法面以外はけっこう定着している。昨年成長した草の間に播く場合、流出はあまり気にしなくていいと思う。
今年のフロストシーディング
実は去年まで、マメ科牧草であるクローバーを一緒に播いていた。今年も、クローバーやアルファルファのタネを播こうと思っていたのだが・・・。上に書いたチモシー1種類を多めに播くのが断然オススメらしい。雑草が絶えたところに播くと、来年の雑草予防にもなるとのこと。
夏にイタリアンライグラスが結構上手く定着した排水が悪い部分には、できればイタリアンをフロストシーディングしたい。これについては種苗屋さんに聞いてみようと思う。
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